Beautiful Piano Improvisation by Tony Perez






  • 数日前、Youtubeをフラフラ彷徨っていたら、素晴らしい「セッション」を見つけた。
  • キューバハバナ市街、老朽化した民家の一室でラフに撮影された、しかしまるで映画のように美しい1幕。
  • ピアノを弾いているのは、彼の国に多数存在する優秀な奏者の中でも最上の部類に入るテクニシャン、トニー・ペレス(残念ながら、いまはもう島にいないみたいだが)、激しくドライブするその演奏の横で軽々と、実に楽しげに、喋るように歌っているのは、同じくキューバを代表するトランペッター、フリート・パドロン
  • この記録映像がどういう理由で撮影されたのかはもう一つよく分からないが、撮影者たちも掛け合いに参加するモントゥーノ部分や、爆撃のように次々と和音を飛ばすトゥンバオを挟み込んだトニー・ペレスの演奏は素晴らしいとしか形容できない(単なるビデオ録音であることと、ピアノ本体の問題で高音がひどく金属的になっているのが残念)。とてもピアノ一台とは思えないほど強力に躍動するリズムとメロディに、背筋と脳を痺れさせる音の波の快感に、恍惚となる。うっとりと、陶酔する。
  • ペレス、フリート、それに撮影者や外野のごく自然な演奏への反応、振る舞い、それ自体が見る側の気分を浮き立たせる。ぼくは巷間でよく語られるイメージほどキューバ人が日本人より音楽を愛しているとは全く思っていないのだが、けれど確かにかれらの一部の層はシンプルに「音」そのものを楽しむことの本質が何であるかを、「からだ」で分かっている。
  • この動画は、そのことを、「音楽を楽しむ」ことの高度なありさまの一つのかたちを教えてくれる。

追記:

トニー・ペレスキューバ人には珍しく(?)スタジオアルバムも非常に優れているが、やはりライブ盤の方がより濃密な演奏をしている。過剰なほど饒舌な音の渦の中でも常に旋律の美しさが失われないのが印象的。