メモ/ノート=劇団東京乾電池【月末劇場】@ゴールデン街劇場
- 夕方から、ゴールデン街劇場で、劇団東京乾電池の「月末劇場」を観た。
- 芝居にはほとんど興味がないのだけれど、アルバイト先で一緒に働いている役者の有山尚宏さんが出演していて、せっかくだからと、出かけたのだ。
- フラッとあらわれた、妙に派手な服装の男一人客というのもなにか不気味でヒドいものだなと思え、女友達も誘ってみる。
- 有山さんが役者だと知ったのは偶々のことだった。
- 昨年のある日、自宅でぼうっとテレビを観ていたら、おや、なぜか見覚えのある黒縁メガネの方が、CMでAKB48と一緒に踊っているのだ。ぼくは、その人と朝、よく顔を合わしているのだった。
- ほんの数十秒のことだったので、すわ見間違いか?とも思ったが、直感がそうではないと告げていた。
- 翌日、「あの、もしかして昨日テレビ出てましたか?」と聞いた。
- 「どれのことですか?」有山さんはそう答えた。
- やはりカンは正しかった、というわけである。
- ぼくは、村上龍が過去のエッセイで映画と演劇を対比させて乱暴にアジった「さまざまなテクノロジーの集大成である映画と比べると、生身の説得性に頼った演劇はあまりに不自然(大意)」という見解の影響を悪い意味で受けていることもあり、演劇や舞台に関してとくに批評めいたことを言う気もないけれど、【会議】と銘打たれたこの日の「月末劇場」は、ごく素朴な意味で、とても楽しめるものだった。
- 極端に狭く、老朽化したゴールデン街劇場では、観者と演者たちとの距離もまた極端に近いのだが、「会議」は、それが功を奏していた。
- ナンセンスな設定のもと、セリフへのツッコミが多様される喜劇から急にテンポアップし、一転、条理を外れた不気味なクライマックスに流れる。
- 構造や物語そのものは、すこし星新一的なものであったり、安部公房の短編を思わせ、やや古風な印象を受けないでもなかったが、出演者のリズミカルな芝居は笑いを途切らせなかった。「演劇を観る!」という過剰な意気込みというか、がんばらなくてもすみ、シロウトのぼくでも集中力が必要なかった。これは良いことだ、と思う。
- 脚本を書いたのは別役実で、不勉強なぼくは存じあげないが、この世界では名が知られた人なのだという(なんて書くこと自体、演劇好きな人には怒られそうだが)。
- 今回のような個人的な関係性が無ければ、おそらく乾電池の芝居を観ること無く、ひとつの経験をもたぬままに、ぼくは一生を終えていただろう(大げさ!)。
- いやそんなことは日々刻々と起きていて、いち個人が塵に還るまでに可能な経験などハナクソのようなものというのはわかっているが、「たまたま、これを観ている。観なかった【いま】も、自分も、当然ありうる」という感覚を、常日頃、気にしてしまうのだった。
- そうした【意識】を刺激する興味深い(人間との)遭遇が多いことは、ぼくのいま就いている不安定な契約労働の(【世間】的にはまるで価値のないだろう)大きなメリットの一つだろうと思っている。