愛の酔っぱらい賛歌

  • 秋である。
  • ビールだけが最高であった季節は終わり、これから色々なアルコールがぼくらを楽しませてくれる気候となる。
  • それに合わせて、一つの詩を紹介したい。
  • 日本人のみで編成されたハイレベルなキューバン・サルサ・バンド「Grupo chevere」などで歌手を務めると同時に、早稲田大学法学部でスペイン語キューバの歴史について教鞭をとっておられる岩村健二郎氏が、谷川俊太郎の「生きる」という詩をアレンジした改作を、紹介したい。
  • 溢れ出すヒューマニズムに赤面せざるをえない元詩を、大胆にも、酒という悪魔に魅入られた人間たちに捧ぐ、力強い、ユーモアに溢れた、素晴らしきアンセムへと変身させている。
  • ここまで、酔っ払うことをポジティブにあらわした詩も他にない。素晴らしいの一言。


「生きる」
 原詩:谷川俊太郎 改作:岩村健二郎


生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
そしたら酒が旨いということ
ふっと思い立ち酒を呑むということ
グイっと飲むこと
お酒と手をつなぐこと

生きているということ
いま生きているということ
それは焼酎
それは日本酒
それはジン
それはワイン
それはウオッカ
すべての美しい酒に出会うということ
そして
かくされた悪を注意深く飲み干すこと

生きているということ
いま生きているということ
呑めるということ
呑みたいということ
まだ呑むということ
それでも呑むということ

生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで酒が発酵しているということ
呑みすぎて地球が廻っているということ
いまどこかで酒を呑みに行こうということ
いまどこかで胃が傷つくということ
いま呑みすぎてぶらんこがゆれているということ
いま酒が喉元を過ぎてゆくこと

生きているということ
いま生きているということ
酒ははばたくということ
酒はとどろくということ
呑みすぎるとはくということ
酒を愛するということ
ぬる燗のぬくみ
いのちということ



谷川俊太郎の元詩は下記
http://members.jcom.home.ne.jp/nyan-mi/ikiru.html

  • 世の豪傑たちに比べれば、ぼくは、全然、話にならない。とるにたらない。
  • そんなレベルの酔っぱらいだが、この詩を読むと、いつも破顔してしまう。そして、勇躍、こう決意するのだ。


「さあ、今日もしっかり酔っ払うべし!」

  • 嗚呼、酔っぱらいに「栄光」あれ…