新宿文藝シンジケート読書会について


10月30日から新宿文藝シンジケート=S・B・Sという集まりで読書会をすることになった。
定期か不定期かはまだ不明だけれど、今後、継続的に開かれていく予定だ。

新宿文藝シンジケートは、元々ただ内輪の呑み会に遊びで名前を付けていただけなのだが、命名者であるサエキ・カズヒコさん(id:utubo)(http://twitter.com/#!/utubo)という友人が「せっかくなのでこのメンツを拡大して読書会をしよう」という提案をぶちあげ、ぼくがそれに協力したかたちである。


サエキさんが作った公式ブログはこちらで
http://d.hatena.ne.jp/sbs_reading_circle/


参加者は今のところ、下記のような人たちだ。
http://twitter.com/#!/Hainu_Vele/s-b-s/members


各々の属性は、画家、作家志望者、サイゾーの中のひと、書店員、あとサラリーマンや各種フリーターだったりで、それなりにバラバラだ。
mixiTwitterではじまった縁が多く、各々の接点も非常にあやふやでよく分からないという、そんな意外性の面白さがある

全員が毎回参加するわけではないし、Twitterのアカウントが無い、上記リスト以外の人たちも参加することはあるだろう。
まだ色々と流動的な状態だから今後どうなっていくのかは不透明だが、とりあえず、第一回目にとりあげる本は決定している。
日本有数(らしい)のカント研究者であり、異能の哲学者、エッセイストでもある中島義道の怪作「哲学実技のすすめ」である。


提案したのは、ぼくだ。








中島のこの著作については色々と考えるところがあるし、30日までにはエントリを改めてまた書くことにしたいのだが、この本以外の場合でも、複数人で読書会をするということは、即ち本を媒介に参加者各人が他者と「対話」をするということに他ならない。
そこでどれだけ強度ある、多様な言葉を交わせるかが、集まりの意義や面白さの程度を決めるだろう。
当たり前のことだが、うわべのやりとりから踏み込もうとする場合(濃密さへの志向)それは容易いことではない。
言葉を「正確に、直截に」(ここが重要だ)発し、行文のいちいちにおいて他者との認識の齟齬を確認していくというような作業は、真剣にやれば、どんなレベルであっても、問う側、答える側の双方に多大な緊張を強いる。
それに、そもそも、多数の日本人はそんな訓練をされていないのだから、なお、堪える。



「日本では対話が軽視されている、というより忌避され、指弾される対象でさえある」


中島はその膨大な著作の中で繰り返し繰り返し、このようなことを語っている。


かれはどのような事柄を指摘しているのか?


現在の日本において、まっとうな社会的人格の持ち主であると認められるには、暗黙の、しかし厳密なルールに則った適切な言葉を場面ごとに使う必要がある。個人の身体的感情に忠実な、信念や思考に基づいた「なま」の言葉を率直に語ることは御法度であり、「さまざまなことを考えて、語るべきときに、語るべき言葉を選んで、語るべきように語る」*1ことだけが必要とされている、ということ。
ある個人とある個人がそれ以外の言葉を交わす(それこそが「対話」への道なのだ)機会は非常に限られているし、基本的には、忌避される。そして、適切な言葉=「語るべき言葉」以外を発し続けていると、共同体からひどく疎まれ、忌まれ、排除されるだろう、と。
無論、これは極論であり、例外が個々人の生の多用な局面でいくつも表れることは当たり前なのだが、他方、いまぼくらが生きる日本の社会で広く共有され、ある意味で強い抑圧と化している共同体の掟を正しく表してもいるだろう。



「忌憚なく自分の言葉で語る」という意味では、「語るべきときに、語るべき言葉を選んで、語るべきように語る」ことが読書会の場でも求められるのだが(【常識】のルールブックに書かれた禁則事項に縛られる「日常語」ばかり使っていては多くの成果は見込めないし、端的に時間の浪費である)、それは、個人の言葉を封殺するためのものではなく、日常生活のさまざまな局面では語ることを許されない多用な言葉のやりとり=「対話」が成されるためにこそ、「選んで、語る」べき「言葉」なのである。

内容に関しては賛否が分かれるかもしれないが、「哲学実技のすすめ」は、そうした言語行為を正方向に誘発してくれるだろうとは思っている。
お遊びから派生したとはいえ、皆がそれなりの時間を割くからには、最大限、自分、ひいては参加者が言語の「功利」、成果を得られる場にしたいものだ。




これを読んで、もし参加を希望するというような超絶奇特な方がいらっしゃった場合、お気軽にメールにてご連絡下さい。
あっさりと詳細をお知らせ致します。

*1:中島義道「たまたま地上にぼくは生まれた」P229 講談社 2002年