メモ/音楽的散財/リスト

  • 前回エントリ「WE DON'T CARE」を観に行ったことを書いたが、それに刺激されたこともあり、久しぶりに音響やトロニカ系のアルバムを発作的に買い漁る。今年に入って初の音楽散財。
  • 音源の候補選定は、今回も「デンシノオト」を全面的に参考にさせて頂く。
  • 猟歩するのは実店舗ではなく、Web。ワールド系のマニアックな音はいまだに配信にも通販にもなかなか商品が増えないので目利きの運営する店に行く意味もあると思うが、同じマイナーでも、この種のジャンルは無数のWebレーベルの無数の音源を、同じく無数のちいさなネットショップが熱心に販売していて、しかもiTunesにもかなりの量がそろえてあるので、家から出る理由がないのである。
  • 今回、iTunes以外に、Amazonのmp3販売をはじめて試してみる(どうも胡散臭い気がしていたのだけれど、意外やこれが、安い、軽い、早い、音質もOKで、品揃え意外はiTunesを圧倒している)。どちらにも配信されていないものは、しょうがないので現物を注文した。

買ったものリスト

    • リュック・フェラーリ大友良英 【 Les archives sauvées des eaux 】
    • マーク・リボー【 Silent Movies 】
    • マーク・マクガイア【 Living With Yourself 】
    • evala / 江原寛人 【 Acoustic Bend 】
    • Fenn O'Berg【 Live in Japan Parts One & Two 】
    • Spencer Doran & White Sunglasses【 Inner Sunglasses 】
    • エメラルズ【 Does It Look Like I'm Here? 】
    • Jefre Cantu-Ledesma 【 Love Is A Stream 】



  • 書きだしてみたら八枚もあった。
  • 配信は価格が安く、Amazonの通販共々にクレカ一括払いのため、スイッチが入ると止まらなくなってしまう。
  • ぼくは最初の一枚を買い出すまでの躊躇いが長いのだが、あとはわりと、堰を切ったようになってしまう。
  • 以下、音が聴けるものに関してはリンクを貼って少しだけ感想を付けてみる。
  • どれも素晴らしいのだが、今のところFenn O'Bergがライブで展開してみせた圧倒的にサイケデリックな電子的カオスと、マーク・リボーがわずかなギターとエフェクトのオーバダブで仕上げた 【Silent Movies】の、息を呑む静謐さと美しさが印象的だ。一曲一曲最小限に切り詰められているので、手軽さもあって、一番聴いている。

リンクと寸評


  • 【 Silent Movies 】はリボーが映画音楽のために書いた曲や、過去の無声映画にインスパイアされた曲を集めたアルバムとのことだが、大げさでなく、これほどギターが独自のノスタルジックな響きの美しさを獲得しているアルバムは稀ではないかと思う。
  • ピアソラの濃密な感情表現とも違う、旋律も音数も抑制され、切り詰められている。
  • モノクロームのセンティメンタリズム」。素晴らしい。それ以外にない。
  • 感傷、しかし、それはただ暗鬱なだけでもなく、安酒場でうっとりと過去を語る気色悪いカントリー・ミュージックナルシシズムとも完全に無縁だ。
  • 最小限の音で爪弾かれる冒頭のVariation 1が醸す寂寥たる残響を残したまま、メランコリックなDelancey Waltzへ入る流れで、既に、ああ「息もできない」!


  • エメラルズのギタリスト、マーク・マクガイアのソロは、下でリンクしたエメラルズの最新アルバムがそうであるように、マニュエル・ゲッチングの影響を感じさせる反復とディレイの多層的ギターが、甘美で「健康的(若者による青春の回顧!)なセンティメンタリズム」に溢れた旋律を奏でる。音のトリートメントは十分に考えられているが、これ見よがしなラディカリズムなどないぶん、ポップスのように楽しめる。
  • Fennesz「エンドレス・サマー」とも比較されるようだが、あちらがゼロ年代の電子音響的ポップネスの最良のかたちの一つであるなら、このアルバムは確かにそれを前進させ、展開させたと言っていいんじゃないか。ロック的なぶん、「軽い」が、音響にシフトしているエメラルズのアルバムより、ぼくは好きだ。



  • Jefre Cantu-Ledesma 【 Love Is A Stream 】
  • 今や少し時代遅れになったとも言われる音響シューゲイザーだが、このアルバムはその最高の成果に近いのではないか。中心が存在せず、多層的なグリッチ/轟音が天空に抜けてゆく鳥肌たつ陶酔感。凶暴なようで制御された音色に、瞑想的なトーンも感じる。全体を通して聴くと単調さもあるけれど、「浴びる」心地良さは特筆すべきレベル。



  • Spencer Doran & White Sunglasses 【 Inner Sunglasses 】
  • ガムランカリンバグリッチ、及びエレクトロニカの融合が見事なアルバム。
  • 金属的な民族楽器をサンプリングした音色とグリッチー、ドローンな音のレイヤーがカラフルで面白い。とりわけ、冒頭に収められたこの「Awakening」は最高にキモチイイ。音響的シューゲイザーの新たな可能性とも言える??


  • Fenn O'Bergは良いサンプルがなかったけれど、【 Live in Japan Parts One & Two 】サイケデリックな混沌が聴き手を飲み込む掛け値なしの大傑作なので、iTunesで試聴してみてください。十年代も最先端のユニット。


  • evala / 江原寛人 【 Acoustic Bend 】
  • このアルバムもiTunesにしかサンプルが転がっていないが、音響デザイン的な作品に興味があるなら必聴の一枚。
  • フランスにある実験的音楽の研究所「IRCAM」が発売した音楽プログラミング・ソフト、MAX/MSPをフルに活用し、フィールドレコーディングした音源も組み込んだ緻密極まるプロセッシングによって、巷に溢れる「雰囲気系」のフィールドレコーディング作品を吹き飛ばす、驚異的な音像が作り上げられている。
  • 歩きながら聴けば、世界の相貌がまるで変わることが実感できるだろう。